劇場版 名探偵コナンシリーズ10作品の感想
※ネタバレあり
せっかく無料配信されてるので懐かしさから見始めた。原作マンガも巻数限定で無料公開されていることに気づき、読んでいるうちに見事にハマり直している。
以下に各映画の簡単な感想をまとめていく。
- ①時計じかけの摩天楼
- ②14番目の標的(ターゲット)
- ③世紀末の魔術師
- ④瞳の中の暗殺者
- ⑤天国へのカウントダウン
- ⑥ベイカー街(ストリート)の亡霊
- ⑦迷宮の十字路(クロスロード)
- ⑧銀翼の奇術師(マジシャン)
- ⑨水平線上の陰謀(ストラテジー)
- ⑩探偵たちの鎮魂歌(レクイエム)
①時計じかけの摩天楼
記念すべき劇場版一作目。僕にとっては超久しぶりのコナンだったがとても楽しめた。内容をほとんど忘れていたが、病室のシーンやクライマックスは記憶に残っていた。近年は「つのドリル」なんてバカにしていた蘭姉ちゃんは恋する乙女なんだと再認識させられる作品で、女子高生の一途な恋だとリアルに捉えはじめるとクライマックスではウルッと来てしまうほど感動的な映画。とはいえ、「新一想いの蘭」描写は今後何度も繰り返され見飽きていくので、やはり後々の作品ではつのドリルという認識に戻っていく…。
Good
蘭姉ちゃんの一途な恋が感動的。
クライマックスのモノクロ演出、良い。
②14番目の標的(ターゲット)
金ローで見た覚えがある。最後の方はガバガバだった気がしていたが、その記憶で間違いなかった。前半は記憶が間違っているのではないかと思えたほど面白かったのだが。
Good
妃英理と小五郎の関係が深堀りされることもあり、前半は結構ワクワクする展開。
Bad
ラストの息切れが酷い。
なんやその動機。
丁寧に作られていればもっと良い映画になりそうな題材だっただけにちょっと残念。
③世紀末の魔術師
子どもの頃見たとは思うが記憶からは消えている映画。有名な動画の影響で鈴木会長をニヤニヤ無しでは見られなかった。
Good
大阪・客船・古城と場所を転々とする盛り沢山な内容。しかも綺麗にまとまっているので見ていて楽しい。
レギュラーキャラが満遍なく活躍する。
前2作から続く、劇場版には白鳥警部が登場するというメタ的設定をうまく活かしている。
史実とうまく絡めたオリジナルキャラと設定。
財宝をめぐる謎をメインに物語が進むので、連続殺人ばかりの劇場版シリーズの中では異色の作品。
Bad
逆に言えば、探偵モノから少し路線が外れている。
推理や伏線があっさりしているのでラストのスッキリ感は少なめ。
④瞳の中の暗殺者
なんとなく記憶に残っているシーンもあるがほぼ忘れていた映画。トロピカルランドを絡めて、本編1話を広げているのがかなり好み。
Good
コナンのオリジンともいえる本編1話の舞台、トロピカルランドを絡めたストーリーが秀逸。
蘭姉ちゃんの記憶喪失によって本編キャラの絆が深まっているのが良い感じ。
クライマックスは中々派手で、スカッとした終わり方。
Bad
奈良沢刑事のダイイングメッセージは流石に無理が…。
前半の大人っぽい雰囲気を踏まえるともう少ししっとりと終わってくれた方が個人的には好みだったかも。
⑤天国へのカウントダウン
マンガを読み直していると改めて思うのだが、黒の組織の登場回は緊張感バツグン。そんな黒の組織が登場する本作もやはり面白い。昔たまたまつけたテレビで後半だけを見たのでワイルドスピード顔負けのクライマックスについていけなかった覚えがあったが、しっかり初めから見ると良い作品だった。
Good
劇場版には黒の組織初登場。しっかりストーリーにも絡んでくる。
少年探偵団、特に灰原哀に焦点を当てたストーリー。珍しく弱みを見せる灰原の姿や、そんな灰原を助ける少年探偵団の勇姿にはウルッと来てしまう。
派手なラストに気を取られて忘れがちだが、杖の音の違いなど伏線の張り方も凝っている。
Bad
探偵団のためとはいえ一度脱出できたのにスケボージャンプで戻っていく展開はちょっと強引な気もする。蘭姉ちゃんが命がけで助けたのに。
⑥ベイカー街(ストリート)の亡霊
異色の設定が新鮮で劇場版シリーズの中でも人気が高い映画。僕の曖昧な記憶の中でも凄く面白かった覚えがあり自分の中でハードルが上がっていたのか、改めて見ると不満点が多かった。独立したアニメ映画にして作中のゲームオーバーの設定を変えれば、もっと感情移入できて面白くなりそうだなぁと妄想してしまう。僕らのウォーゲーム→サマーウォーズのようなリブートが見てみたいなぁ。
Good
仮想現実空間を舞台にした、劇場版の中でも異色を放つ設定。
シャーロック・ホームズの時代のロンドンが舞台。ホームズ要素もふんだんに盛り込まれている。
Bad
推理要素が少なめで、トリックや犯人を予想する楽しみはほとんどない。
ホームズ要素があるのは楽しかったけど、ちょっと雑に盛り込みすぎだった印象。
犯人がジャック・ザ ・リッパーの子孫という設定やそこからくる動機にムリヤリ感が強い。「世紀末の魔術師」の二番煎じだし、あちらの方がまとまっていた。
ファミリー層への配慮か、折角のジャック・ザ ・リッパーは不発ぎみ。どうせ登場するならもっと血みどろな感じで恐怖感を盛り上げてほしかった。原作では残忍な事件もあるんだし、ある程度の表現は許されると思うんだけど。
表現の限界からクリエイターの不満が爆発したのだろうか、なかなか露骨な社会批判が盛り込まれていて驚いた。子どもたちにメッセージを伝えるのは良いんだけど、もう少しマイルドにしてほしかったかなぁ。コナンでこれをやるとキャラクターに思想を語らせている印象を受けてしまうし、それこそリブートすれば良い感じになりそう。
⑦迷宮の十字路(クロスロード)
世代的にも、劇場版コナンといえばこれがまず思い浮かぶ。何度も見ただけあって内容は一番覚えていた。
Good
チャンバラ要素が豊富。チャンバラなので最初の殺害シーンもきっちり描くことができている。
犯人はお馴染みの「黒い人」ではなく翁の面で顔を隠している。正体がバレないこともあって、平次達を執拗に襲ってくるためスリル満点。ビジュアル的にもインパクト大。
トリック・推理・伏線も中々しっかりしている。
14番目の標的の小ネタや小五郎のはしゃぎっぷりなど、笑いどころも多い。
クライマックスは少し無理矢理な展開もあるが、分かりやすくかっこいいシーンを詰め込んでいて好き。和葉の手毬歌はわざとらしいとはいえ感動的だし、鞘が砕けるシーンのアニメ的なかっこよさは最高。
主題歌や和風アレンジされたBGMが良い。
Bad
容疑者が少ないので犯人が分かりやすすぎる。
なんやその動機。
⑧銀翼の奇術師(マジシャン)
Bad
流石に展開が大袈裟すぎる。飛行機の描写が無駄に細かいため、長ったらしい。
飛行機内で起こる殺人事件も低クオリティ。
Good
空港大破など、大袈裟すぎて笑えるB級的な面白さは少しある。
目暮警部一行の登場はもはやギャグアニメ。白鳥大橋のオヤジギャグは嫌いじゃない。
序盤のキッドが新一に変装する展開は中々楽しかったので、これで引っ張れば良かったのに。
⑨水平線上の陰謀(ストラテジー)
前作のお粗末さもあって期待値はかなり低かったが、それを逆手にとられたのではないかと思うほど後半のどんでん返しにうまくハマってしまった。良作。
Good
小五郎が謎を解き明かすという約束破りの展開。オープニングの「もう少し推理頑張ってくれよなぁ…」もしっかり伏線になっている。おっちゃん得意の背負い投げが見られる格闘シーンも今作独自の魅力。小五郎が急に冴え渡る理由もちゃんとしていて良い感じ。
伏線も随所に張り巡らされていて中々しっかりしたつくり。
Bad
正直、中盤の捜査パートはかなりダレる。ダレていた分、後半のどんでん返しを楽しめたとも思うが。
トリックが少々物足りない。その上、貴江社長殺害のトリックは無理矢理感が強い。
他作品に比べてクライマックスの迫力は弱め。まあ、他が大袈裟すぎるとも言えるけど…。
「思いやり」という子供達へのメッセージをしっかり盛り込んでいるのは良いんだけど、そもそも蘭とコナンのピンチを作った原因がポッケに隠した貝殻メダルなのでなんとなく腑に落ちない…。
⑩探偵たちの鎮魂歌(レクイエム)
遂に無料配信最後の作品。これを最後に見せられたら、この先の劇場版見る気なくしちゃうよ…。
Bad
「この事件には最初から必要なかったんですよ…名刑事も名探偵もね」と台詞にもあるように、事件の真相が普通に見ているだけで分かるため推理やトリックの面白味ゼロ。ネタが思いつかなかったのでなければ、そういう意外性を狙ったのかもしれないが、いったい何を見せられていたんだ…という徒労感は否めない。
人間関係のとっ散らかり、無理矢理な展開、大したことないオチなど色々と残念な映画だった。その割に今回の10作品の中で最も尺は長い。
Good
レギュラーキャラが数多く登場し、どのキャラクターにもある程度見せ場がある。
あとがき
劇場版コナンというと「迷宮の十字路」くらいしか印象に無かったが、改めて見ると意外に面白い映画が多かった。特に「時計仕掛けの摩天楼」は原作にまでハマり直す良い起爆剤になってくれた。
原作ストーリーまで追いかけるのは小学生以来。見るのをやめたのは赤井秀一がアニメに初登場した頃だろうか。
当時、クイズ本をボロボロになるまで読み返していたのを覚えている。子供騙しの本ではなく中々マニアックな内容で、本編は数巻しか持っていなかったのに読み直していて懐かしいエピソードが多いのはそのお陰だ。
また、6,7年前に『SHERLOCK』にハマってシャーロック・ホームズシリーズを読破し、その流れで金田一耕助シリーズもそこそこ読んでいたのだが、推理小説のトリックを知った上でコナンを読むと、マンガならではのトリックが新鮮で面白い。奇抜なトリックでも、絵で視覚的に説得力を持たせられるのはマンガの強みだなぁ。