泥沼記

仮面ライダーBLACK

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いつか見たいと思っていた仮面ライダーシリーズをまずはBLACKから見始めた。

ストーリーや人々の振る舞いから昭和の温かみがなんとなく感じられてほっこりするのだが現代社会の陰りも垣間見える。そんな昭和末期という時代背景が既に魅力的。

流石にアホらしくて笑えるところは多いけど、中々危ないスタントで体を張ったアクションや、キモ可愛いものから不気味すぎるものまで幅広い怪人の造形も魅力。今なら子供向け作品ではアウトになりそうな演出が多いのも見ていて面白い。映像にはCGや合成、逆再生など随所に工夫が凝らされており、30年以上前の作品なのに製作者が表現したかったものは十分伝わってくるし見ていて結構楽しい。

倉田てつを演じる南光太郎が良い味出していて気迫のある声や凛々しい顔と、無邪気な笑顔のギャップがヒーロー役にハマっていた。

終盤までのナレーションは小林清志だし、中田譲二がガッツリ出演する回もあって声オタ的な楽しみもあった。

 

シャドームーンを目当てに見続けていたが今見ても中々楽しい作品だった。序盤はまあまあだが、20話以降から右肩上がりに面白くなっていく。以下に特に面白かった回のピックアップと感想をまとめていく。ネタバレ注意!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

5話「迷路を走る光太郎」

ヤギ怪人に洗脳された村が舞台となる回。洗脳された村の様子はまるでTRICK股間から凄い勢いで火を吹くヤギ怪人にも目が離せない。ヤギ怪人、意外とつぶらな瞳で可愛い。

 

21話「激突!二大マシン」

バトルホッパー対ロードセクターのバイク対決という、予告の時点で思わず笑みがこぼれてしまう回。バトルホッパーかわいいよバトルホッパー。ロードセクター登場時から疑問だったバトルホッパーの必要性だけど、タイヤの違いからオフロードに強いという現実的な長所があったことに驚き。他の回の乗り分けには反映されてないけど…。

 

25話「爆走する武装メカ」

これもバイク回。バトルホッパーやロードセクターはワザと個性的なデザインにしたんですよ、と言わんばかりの黒くてカッコいい超マシンが登場、そして爆散する。この爆散シーン、爆発からバイクの残骸が滑り出てくるのが凄く良い。カマキリ怪人が鎌を使って牢屋を開けるシーンも見逃せない。

 

27話「超能力少女を救え」

少女が鬼気迫る表情で暴れ回る、子役の名演が光る回。女の子が怪力を発揮して暴れ回り主人公をボコボコにするというシュールな絵面を、変に飾らずふざけずに見せてくれるのは昭和ならではの実直さ。

 

28話「地獄へ誘う黄金虫」

商業社会を痛烈に皮肉った、オオガネムシに夢中になる大人達の滑稽さ。金に目が眩んだ人間達に絶望したかのように見える光太郎。その隙をついて襲いくるビルゲニアに光太郎は叫ぶ。

「俺は絶望などしない!サトルくんのような純粋な目を持った少年がいる限り絶対にしない!」

僕の中では今作きっての名シーン。ヒーロー作品には「主人公のヒーロー像が完成する瞬間」が人それぞれにあると思うのだが、僕はこのシーンだった。

 

33話「父と子の愛の河」

ベニザケ怪人は見た目のインパクト抜群。川を逆流させるという能力も面白すぎるし、そもそもベニザケを怪人にしてしまう発想に恐れ入る。今回チラッと映る克美さんが何故かポニーテールになっていてメチャクチャ可愛い。

 

35話「対決!二人の王子」

三大神官のパワーを吸い取って、ついに登場するシャドームーン。バラオムのツルツルフェイスまで皺々になるのは流石に笑ってしまう。ビルゲニアが咬ませ犬として完璧な仕事をしていて、シャドームーンの勝てる気がしない強敵感を引き上げていた。話すとめちゃめちゃ良い声なのも驚き。

 

39話「アイドルの毒牙」

ムカデ怪人に魅了され窮地に陥った光太郎を救う杏子ちゃんとバトルホッパー。自我を持ったバトルホッパーならではの活躍が見られる回。言葉の暴力をぶつけてくるシャドームーン様にも注目だ。

「社会や学校に失望し、アイドルを応援することでしか生き甲斐を感じられない若者に目をつけるとは、良いところに気が付いたな」

 

40話「カラテ名人の秘密」

子供がメインとなるストーリーかと思いきや、大人の弱さとその克服が描かれていてかなりグッときた。

ノリノリでサトルくんを先輩と慕う光太郎の様子には凄くほっこりさせられる。サトルくんの方も中々の名演で、怪人に恐怖する叫び声がリアルだし光太郎に先輩ヅラする様子も生意気さがなくて微笑ましい。

サンショウウオ怪人のビジュアルや水場での迫力ある戦闘も良かった。本当は炎に怯むサンショウウオ怪人がカラテ名人の覇気に圧倒されているように見えるシーンも最高。笑いどころも感動もあって堅実にまとまった大好きな回。

 

46話以降

どこか憎めない可愛さのある本作の怪人たち。クジラ怪人はアンモナイト怪人(の片方の頭)以来の「良い怪人」。ライダーに介抱され海に消えていくつぶらな瞳のクジラ怪人の姿はニヤニヤなしに見られない。

そして衝撃の47話「ライダー死す!」ではシャドームーンとの激闘の末、仮面ライダーBLACKは命を落とすことになる。BLACKの象徴でもある拳が力なく開くシーンは素晴らしい演出。当時見ていた子供たちはさぞ絶望したことだろう…。

48話、49話ではクジラ怪人の介抱と杏子・克美の想いによってライダーが復活する。ライダーの死とゴルゴムの脅威に絶望した人間達の様子が生々しく描かれているのは流石。

遂にクライマックスとなる50話、51話。仮面ライダーBLACKとシャドームーン、更には創世王との対決が描かれる。バトルホッパーの犠牲は中々感動的だし、最期までライダーに剣を向け続けるシャドームーンの悪役っぷりが良い。ただ、過去のダイジェスト映像は多いのに肝心のシャドームーン戦があっさりだったのは少し不満なところ。

そしてエンディング。渡米した杏子と克美は結局帰ってこず、戦いを終えた光太郎は孤独な旅に出るという、子ども向け作品とは思えないもの。杏子達と無邪気にはしゃいでいた過去のシーンと現在の孤独な光太郎の姿が対比的で、何とも言えない物悲しいラストとなっていた。