泥沼記

スパイダーマン: ノー・ウェイ・ホームの感想

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見てきました。予告編であらすじが出来上がりすぎてて心配だったけど、流石にストーリーには捻りが効いている。とはいえ、広げた風呂敷を上手くまとめられてはいるんだけど、少し要素を盛り込み過ぎていて個人的には後一歩響かない出来だった。

でもまぁ見所は多いので劇場で見る価値は十二分にあり。

以下ネタバレあり。

















ストレンジがやらかして、その対処…というトレーラーを見せられていたのでこれ以上どう広げるの!?と心配になったが、流石にトレーラーのままのストーリーということはなかった(当たり前)。

ヴィランを頭ごなしに倒すのではなく更生させて共存しようというテーマは、最近の創作物の潮流を上手く取り込んでいるなぁという印象。ただ、簡単に更生してしまうのでは過去作品を疎かにしてしまうわけで、そこら辺に一山あったのも上手いバランス。ストレンジとの対立や戦闘シーンも凄く良かった。ここは劇場で見て良かったと心底思える部分。

また、騒動の発端がスパイディ自身にあることや最終的に自己を犠牲にして解決を図るところには、アイアンマンっぽさが溢れていて良い。ベンおじさんが不在の今シリーズではトニーが父親ですから、その点が一貫していて良いですね。

そしてスパイダーマンで何度も擦られてきたベンおじさんの死が描かれない、ということはそれに代わる喪失は避けられないわけで。満を持してメイおばさんの死が描かれる。グリーンゴブリンの高笑いも相まって、バットマンじみた中盤のシリアス展開は中々衝撃的。

ただDC的な重苦しさを引きずり過ぎてマーベル色が霞んでしまうことを恐れたからか、スパイディトリオで無理やり空気を和らげようとしていたのは個人的に微妙な印象。テーマ的に別ユニバースのスパイダーマンの登場は避けられないとはいえ、ちょっと安っぽさを感じるとっ散らかり具合があった。クライマックスでピンチに駆けつけるくらいのアクセントで良かった気はする。(折角出すならガッツリ描く、というのも分かるんですけどね。サム・ライミスパイダーマン大好きなのでトビー・マグワイアを思う存分楽しませてくれたことに対して文句は言えない)

最終的にピーター・パーカーの存在はみんなの記憶から消えてしまうわけだけど、正直言ってピンと来にくいこの悲劇(タイムスリップものみたいに、関係を再構築すれば大したことないじゃんと一瞬思ってしまった)が丁寧に描かれていたのは好印象。メイおばさんが亡くなり全ての友人達からも忘れ去られて正真正銘の孤独に陥ったピーター。そんな彼がめげずに頑張るのはトニーやメイおばさんから受け継がれたヒーロー精神なのだと考えれば、グッときますね。

ただ、細かくネチネチ考え始めるとスパイダーマンのことはみんな覚えているけどピーターのことは忘れているって何だかよく分からない。
特にハッピーに自分がスパイダーマンだと打ち明けたとしたらどうなるの、という感じ。ハッピーにとってはスパイダーマンの記憶とピーターの記憶が切り離しにくいわけだし。まぁそういう人はマスクありのスパイダーマン像だけ覚えていてその他は一切忘れている、と考えれば辻褄は合うのだろうか。


ともあれ、ハイスクール編に区切りのついたスパイダーマン。ポストクレジットのシンビオートは、恐らく作られるであろう次回の大学生編スパイダーマンがいきなりvs.ヴェノムから始まることを期待させるものだった。ドラマやら何やらで追い掛ける気が削がれてしまう最近のマーベル作品だけど、スパイディだけはちゃんと追いかけたいと思わされますね。