泥沼記

The Last of Us Part Ⅱ クリア後感想

f:id:doronumax:20200626090631j:image

個人的には結構楽しめただけに、クリア後に各所のレビューを見てびっくり。まあ思い返すと確かにダメなところは多いかも…。

 

※以下ネタバレ注意。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最大の不満点

今作が多くのプレイヤーをガッカリさせた最大の原因は『アビー編の出来が良くないこと』だろう。最終的には今作に満足した僕でもアビー編はそれほど楽しめていなかった。

アビー編では彼女がジョエルの仇というのを抜きにしても、ストーリーに感情移入できないまま引っ張り回され続けるだけだった。ゲーム的な作り込み・遊びが少なく各キャラクターへの掘り下げが足りなかったことや、そもそもキャラクター達に魅力が無かったことが原因だろうか。

本来、アビー編にはプレイヤーに「アビーを許すきっかけ」を作るという意図があったはずだ。プレイヤーは復讐相手の視点に立たされ、その中でレブという存在を知ることになる。これを通して、アビーを許すまではいかなくともレブに思い入れを持ってくれることに期待したのだと思う。レブの存在がエリーとプレイヤーの間に「復讐心の差」という形で感情のズレを生み出し、ラストシーンの感動を高める狙いがあったのだろう。

だが実際はレブの存在をプレイヤーに向けて説明するだけの、ストーリー補完程度の役割しか果たしていなかった。それどころか、製作者サイドからアビー達ファイアフライ残党を許すことを仕向けるようなわざとらしさから、より復讐心を堅固にしたプレイヤーも少なからずいたはずだ。僕もアビー編開始時は感情移入なんてしてやるものかとかなり反抗的にプレイしていた。そんな状態でも引き込んでくれる展開を期待していたのだが…。

せめてレブにだけでももっと思い入れできるように描かれていれば、アビーがエリーとディーナを見逃したことにも説得力が生まれたし、エンディングに感動できるプレイヤーも増えただろうに…。

 

 

良かった点

①ゲーム性

ゲーム性については文句無しの出来。ステルスホラーとしての緊張感は大きく増していたし、探索できる場所の多い広がりのあるステージばかりで楽しかった。

 

②ストーリー

まずは序盤の山場である「ジョエルの死」。このシーンはトラウマ級にショッキングではあるが、他に類を見ないほど衝撃的で非常に良かった。プロローグのアビーの台詞からまずはディーナが拐われるor殺される展開を予想してしまったし、なんならトレーラーからこのミスリードを誘う伏線が張られていたこともジョエルの唐突な死の衝撃を大きくしていた。ひと思いに殺されずいたぶられるという展開が生存フラグにならず、結局無残に殺されるのもショッキングさに拍車をかけている。

 

その後のエリー編シアトルではそれほど大きな展開もなく失速気味だった。チャプター毎に心を揺さぶられ続ける素晴らしいストーリーだった前作と比べれば、見劣りするのは確か。

ただ、チャプター間に挟まれる回想シーンは出来が良くストーリー性を補ってくれていた。

 

③エンディング

アビー編については先述の通り。

その後は農場シーンを挟んでサンタバーバラ編、そしてエンディング。やはりこのエンディングこそが本作の評価が分かれている最大のポイントだろう。僕にとっては不思議な感動をもたらしてくれた、良いエンディングだった。

普段は「ガンソード」とか「ボーダーライン」のような容赦無い復讐を遂げる作品の方が好みなんだけど、今作では農場のシーンから既に復讐なんてもうやめてこのまま静かに暮らしてくれと思いはじめていた。サンタバーバラ編の日記を読むと復讐に囚われたエリーが相当壊れてきているのが分かったし、ラストのアビーとの決戦では嫌々操作していた。もしかしたらと思って急所攻撃を一度見逃したくらい、エリーに止まってほしかった。

アビーが自分一人ではなくレブという守るべき存在の為に生き延びようとしていることも、アビーを殺したくならない理由の一つではあった。レブ自体には殆ど思い入れがなかったけど。

さて、そんな僕の思いとは裏腹に暴走するエリーが最後の最後にギターを弾くジョエルの穏やかな姿を思い出し、止まってくれた。ここに不思議な感動を覚えた。エリーとは感情がズレたまま操作させられていただけに、この感動は大きかった。

逆に復讐心を燃やしていたプレイヤーなら、今まで共感できていたエリーが突然裏切るわけだから、相当興醒めしてしまったはずだ。復讐したいか・したくないかに関わらず、一連のシーンで終始エリーに共感し続けたプレイヤーなんて1人もいないのではないか。

 

これには「エリーが何故アビーを殺さなかったのか」を皆に考えさせる意図があったのかもしれない。どのプレイヤーでも「あれほど殺そうとしていたのに何故やめたのか」が気になるはずだ。複雑なエリーの心情をじっくりと紐解いていくことに楽しみを残したんじゃないだろうか。プレイヤー達に様々な議論を交わさせ、オンライン要素の無いゲームでも短期間で消費させないという挑戦的な狙いがあったのかも。

 

エリーの心情を紐解く鍵となるのは、エピローグの回想シーンで明かされるジョエルとの最後の会話。

この会話、ジョエルの切ない親心が溢れ出していて凄く良かった。ジョエルは、エリーの生きた証を残すチャンスを奪った罪悪感で一生恨まれても仕方ないと思っていたのだろうけど、それでもエリーは自分を許したいと言ってくれた。一生許せないほど憎んでいる人間を許そうと必死にもがくエリーの苦しみを察して、ジョエルは涙したのだろう。

 

ただ、ジョエルの想いはともかく、エリーがアビーを殺さなかった理由はこの回想シーンを見た上でも分かりにくい。結構色々考えても完全にしっくりくるものは思いつかない。(一応後日、考察記事を上げるつもりだけど)

 

僕はなんだかんだでエリーに復讐を止めてほしいと思えたが、エリーと共に復讐を遂げたかったプレイヤーにとってこの理由の分かりにくさは落胆に繋がったはずだ。よくわからない理由でアビーを殺せずに、不満を残して何の感動もなく終わるエンディングでしかない。

そんな状態でストーリーをじっくり考察したくなるプレイヤーなど殆どいない。アビー編の出来の悪さは彼女を許すきっかけを掴めなかった人を増やしてしまったに違いないし、今作が狙いにしていた「議論」が巻き起こることがなかったのもこの為だろう。僕のように何となく感動を覚えて満足したプレイヤーは半数にも満たなかったのかもしれない。