泥沼記

こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話

今年の映画見納めは友人に誘われてのこの作品でした

全く知らなかった作品ですが退屈せずに、むず痒いところも後味の悪さもなく楽しく鑑賞できました

 

以下ネタバレあり

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

筋ジストロフィーの鹿野は他人の介護無しには生きられない男ですが、ボランティアの介護者たちに全く遠慮をしない、憎たらしいけど明るい人物です

しかしだからこそそんな自分に介護をしてくれる人たちのありがたみをわかっている

 

ボランティアとは何か、人助けとは何かを一般的な道徳観から語りかける良い作品でした

ボランティアに進んで従事したことのない自分は、劇中の田中くんのような考え方が非常にわかるんですよね

人助けをする場面に出くわせば人助けをするし、人当たりよく振舞っているけど、腹の底では嫌なことを考えるときもあるし

人助けをする自分に満足するための、人助けをしてしまう気持ちはあります

 

とはいえ後半にあった、子どもを助けるシーンからもわかるように

困っている人に気づいてしまうとほっとけないのが人情なのでしょう

後からどう思おうがそのときな衝動が大事なのだと思います

 

逆に助けられることを恥ずかしいと考えすぎるのは自分を生きづらくするだけだし、せっかく助けてくれる人からも気の毒に映ってしまいます

それならいっそ開き直って(だからといってありがたみは忘れずに)明るく正直に振る舞う方が助ける側もさっぱりとした人助けができる、という考え方は今まで自分にはありませんでした

 

正直になれない世の中だからこそ、正直になれるところは正直に、というのが生きるのが楽しく前向きに生きる秘訣なのだと教えてくれる作品でした

他人に気を遣いすぎても、結局人は自分の視点がメインなので辛いだけですよね

 

とはいえ作中の鹿野は両親に負担をかけないように、かといって他人の良心を利用するわけでもない理想的な「助けられ方」をしていましたね

 

やりたい人だけやればいい。友人・家族として助けてくれる人との繋がりを築いていました

我々も本当に仲のいい友人が困っていれば直感的に、偽善としてではなく助けようとするはずで、作中では鹿野とボランティアたちはその関係なのだなという説得力がありました

 

やめたい人を引き止めるある意味で良心に訴えかけるズルいやり方は決してしていません

田中くんのときも大学まで押しかけてはいますが、自分より田中くんの人生を考えさせる説得をしていて引き止めではありませんでした

自分にできること、助けられるかもしれない人がいたらお節介かもしれないけど積極的に助けに行く。鹿野自身のボランティア精神が垣間見える良いシーンですね

 

後半の田中くんと美咲ちゃんを自分を貶めてまで引き合わせるシーンは一番感動しました

少し聖人すぎる気はしますが

 

話の流れ的な感想としてはこの手の作品でありがちな説教くささや後味の悪さはなかったのが良かったです

御涙頂戴も最小限でくどくなかった

 

最後の恋愛要素重視の話の締め方は個人的には好きではありませんが

こちらにフォーカスしないと、どうしても鹿野の死に触れないと話がしっくりまとまってくれないとは思うので、後味を良くしようとしたなら仕方ないかなと思います

 

にしても大泉洋ははまり役でしたねー

しっかり筋ジストロフィー患者としての演技力もありユーモアも出せていました

 

いつもはあまり道徳的な邦画を観ないので、映画を見る上で良いスパイスになりました

誘ってくれた友人に感謝