泥沼記

誰よりも狙われた男(2014)

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ジョン・ル・カレ原作。主演はフィリップ・シーモア・ホフマンで、本作が彼の遺作となってしまった…。

非常に落ち着いた雰囲気の作品だが、退屈で眠たいところは一切無くテンポ良く進む秀作。

 

以下ネタバレあり。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

本作の見どころはなんといってもバッハマン率いる諜報チームの手際の良さ。説得力のある手際で、とんとん拍子に諜報活動を進めていく様子は見ていて気持ちがいい。

ときには恐喝や拉致監禁を交えながらも、相手をうまく懐柔し味方につけていくバッハマン。この人心掌握に長けた、老練で狡猾なタヌキ爺の演技が素晴らしい。

 

相手を力で脅すのではなく巧みに懐柔し長期的に利用するバッハマンの戦略は確実性には欠けるかもしれないが効率的だし人道的だ。しかし目先の手軽さ・効率性を求める人々にはそれが理解できないようで、最後の最後で彼は目標を横取りされてしまう。

 

手柄を奪われ、自らの考えを完全に拒絶されたバッハマンの哀愁漂うラストは見ているこちらも悲しくなってくる。去っていく彼がこれからも戦い続けるのか、それとも燃え尽きてしまうのかは我々にはわからないが、彼のような人物がいなければテロリズム、報復の連鎖は断ち切れないのかもしれない。