泥沼記

ベテラン(2017)

最近、アマプラから消えつつあるファン・ジョンミン映画を消化していた。連続で見ているとジョンミンさんの七変化っぷりを堪能できる。
というか最早、ファン・ジョンミンの映画を追いかけていれば韓国映画は一通り楽しめちゃうんじゃないかとさえ思えてくる。韓国映画入門にオススメかもしれない。(アマプラからは今作も含めて結構消えちゃったけど…。)
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今作は韓国映画には珍しく「痛快エンターテインメント」的な作品だった。そんな資本がモノを言いそうなジャンルでも、オヤジくさくて親しみやすい主人公やアジア的で微笑ましいコメディ、見ていて楽しいけどスマートすぎない格闘などのお陰でハリウッド映画にはない魅力を持たせているのが良い。カーチェイスも良い出来だったのには驚き。韓国映画ってカーチェイスだけは残念なクオリティのものが多いし…。
自分の足の臭いをわざわざ嗅ぐようなオヤジくささも、汚らしさがなくコミカルに見えるのは流石ファン・ジョンミン。「アシュラ」の怖い笑顔が嘘のように、人の良いオヤジ感が出ていた。
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庶民vs.富豪のストーリーは一見「金持ちは悪」という安易なものに思えるが、韓国は「ナッツリターン」が起きたようなお国柄。傍若無人に振る舞うエリートは御伽噺の中だけの存在ではない。
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そんな社会批判に加えて、虐げられる貧困層の描写にはお得意の容赦無い表現力が活かされていたし、ハイクオリティなエンターテインメント映画でありながら今までの韓国映画のノウハウが凝縮された贅沢な一作だった。
ちなみにドンソク兄貴もカメオ出演。彼のようなゴツい強面にも喧嘩腰な悪役チョ・テオさん、大物すぎる。