泥沼記

用心棒(1961)

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リアルな人間ドラマを売りにしていた『七人の侍』に比べて、こちらは「劇」的な面白さ。主人公・三十郎は渋かっこいいけどどこか親しみやすくて良いキャラしてる。三船敏郎の誇張抜きで「目にも止まらぬ」剣捌きも素晴らしい。

FFXゴールデンカムイなど様々な作品でオマージュされ続けるのも頷ける、コミカルな面白さと画面のかっこよさが詰まった作品。

 

クライマックスで三十郎がゆったりと歩いてくるシーンは、古臭さを感じないどころか今見ても先鋭的でイカしてる。長らく引っ張っておいてあっという間に終わる殺陣も最高にカッコいい。三船敏郎の見事な剣捌きによって、ごく短い間に見応えが濃縮されていた。

Ghost of Tsushima クリア後感想

じっくり遊んでいたGhost of Tsushimaもようやくクリアまで漕ぎつけた。

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ぶっ通しで遊んでしまうようなハマり込むタイプの面白さではなかったが、戦闘の楽しさやサブクエストの豊富さ、そして何より景色の綺麗さから遊べば遊ぶほどジワジワと魅力が増していくゲームだった。特に戦闘は期待を大きく上回る楽しさで、大ボリュームのオープンワールドを最後まで飽きずに遊び続けることができた。景色は多種多様でどこへ行っても息を飲むほどの美しさ。Sucker Punchが持つ和の絶景の引き出しの多さに感服してしまう。

反面メインストーリーでは少々強引な展開が目立ち、オープンワールド洋ゲーらしい大味なものだったのは残念なところ。熱い展開もあったんだけど、置いてけぼりを食らう場面も結構あった印象。

 

以下ネタバレあり。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

サブクエストは大ボリュームかつ多種多様なものがあり大満足。特に傳承クエストは琵琶法師の語りやボス戦などの演出が凄く凝っていた。あっさりしたサブクエストでも、後で助けた人との会話ミニイベントが用意されていることもあるのは細かい作り込み。

メインストーリーは前述の通り少し大味。ゆなと金田城に攻め入り橋から落とされるオープニングや、後半のたかと共に捕らえられるシーンなど雑な急展開がちらほらあった。また、特に残念なのは選択肢による分岐がエンディング直前の2択のみだったこと。ステルス要素は敵の挙動も含めて結構チープだし堂々と戦い続ける方が楽しいだけに、ストーリー分岐でロールプレイの幅を持たせてほしかった。

インファマス2でも善悪の分岐があったし、今作も当初は「誉れ」ルートも作るつもりだったんじゃないかと思ってしまう。(デジタルデラックス特典のコメンタリーでも「武士道精神」を全て描き切るつもりだったが、絞り込んだことが語られていた)

民や仲間の犠牲を払いながら誉れを守り抜くルートがあっても面白そうだったけど、コメンタリーにあるように「圧倒される=現代人では共感できない」ストーリーになることがポシャった理由なのかも。

 

 

 

まぁメインストーリーでの分岐が無かったのは仕方ないにしても、ウィッチャーのようなサブクエストの分岐は欲しかったところ。せっかく長期に渡って続く仲間達のサブクエストがあるのだから、分岐を設けて後半の内容がガラッと変化していたら面白かっただろうに。本来メインストーリーに組み込むべきものをサブクエストとして小分けにしただけ、という印象も強まっていた。

 

とはいえ、戦闘の楽しさと景色の素晴らしさはそれらを補って余りある魅力で、全体としては大満足。ストーリー周りの濃密さが加わっていれば最高だったんだけど、流石にリソースと時間的に厳しかったんだろう。

ちなみに2周目を始めると幼少期の志村との手合わせのときから既に、「民を守る」という仁の信念と志村の古い武士道が対立していることがわかって面白い。(1周目では記憶に残らなかった…)

古い武士道と民を守ろうとする新たな武士道の対立は現実の鎌倉武士達にもあったことがコメンタリーで語られているし、時代背景に則した良いテーマだったと思う。仁が民を守ろうと決心するような幼少期のエピソードなどがあればもっと良かったんだけど。

 

収集要素の為に旅人の装束で移動することが多かったし、周回プレイでは着せ替えを思う存分楽しみたいので早くニューゲーム+を追加してほしいなぁ…。

パプリカ(2006)

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高校生の頃見たけど全く分かってなかった作品。面白かったと思い込んでいたが、心の底ではなんだよその終わり方と思っていたはず。胡散臭さマックスなのは大好きだったし、平沢進の音楽はその後しばらく聴いていたけど。

 

今見ると深く突き刺さるし、メッセージ性にも大きく共感できる。豪華絢爛で胡散臭い雰囲気や現実社会の風刺が入るという点では「千と千尋の神隠し」を煮詰めて濃厚にしたような印象を受ける。

 

※以下ネタバレあり

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クライマックスのパレードでは現代社会への風刺がてんこ盛り。次々と自殺するサラリーマン。携帯中毒の女子高生がスカートをめくれば、ホイホイ釣られていく男達。「花もなければ実もならぬ」といじけ、「どうせないなら何もせぬ」と引き籠る者。世の不安を票に変えた後は、醜く足を引っ張り合うだけの政治家達。

 

今尚こびり付く現代の闇。そんな暗い世の中を変えるのは「男と女」、そして「子ども」だという力強いメッセージで物語は締め括られている。我々は大人・老人のどす黒いエゴを綺麗さっぱり払い除ける子ども達の純真さに最後の期待をかけるしかない。

ただ、現実はこの理想から益々離れて、子ども達に背負わせるものがどんどん膨れ上がっているように思えるのが悲しいところ…。

風立ちぬ(2013)

もののけ姫千と千尋の神隠しで上がったジブリ熱。この機会に未見だった風立ちぬを見ておこうと思い立った。

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予備知識は「零戦開発者の話」という程度だったのでプロフェッショナル的なお話かと思っていたが、蓋を開けてみると凄く良い人間ドラマだった。ジブリの画風で描かれる昭和初期のレトロな町並みも良い。

 

それほど活躍しないまま終わるメインキャラがちらほらいるし、終わり方がちょっと唐突な気もするけど、これは余計なものを削ぎ落とした結果だろう。

庵野秀明の声優初挑戦は流石に辿々しくて所々違和感があったけど、きちんとした声優では格好良すぎて味気なかったに違いない。

ちなみに同じくアニメ吹替には初挑戦と思われる國村隼は良い仕事っぷり。國村さん良い声だしまたジブリに出て欲しいなぁ…。

七人の侍(1954)

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60余年もの時を越えて人気の衰えない名作だけあって、見どころは満載。シリアスな展開だけではなく娯楽として楽しめるシーンも多くあるため、モノクロで3時間を超える長尺でも全く苦にならない。

 

※以下ネタバレあり。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

前半の「仲間集め」は時代劇らしい明るさでほっこりできるし、後半の馬を最大限に活かしたアクションシーンは超スリリングで楽しい。マネキンが引き摺られるようなシーンでも凄くリアルに見えるのはモノクロの良さ。

『マッドマックス 怒りのデスロード』でオマージュされているシーンなんかもあって、今の世代が見ても楽しめる。昔の映画のオマージュってこういう楽しみ方を与えてくれるんだなぁ…。

 

昭和の時代劇といっても描かれる人間ドラマは芝居がかったものではなく、とても生々しい。

前半では農民という身分の悲惨さが描かれるものの、侍に助けを求めた彼らが過去には「落ち武者狩り」をしていたり、最後の最後まで酒や食料を隠していたりと農民の姑息な一面も描かれているのは面白いところ。この農民の「胡散臭さ」は、ハッピーエンドとは言えない後を引くエンディングにも繋げられていた。

農民と武士の若者達によるロマンス要素もある。野武士との合戦を前に身分の差を考えず恋に落ちる2人の様子は、現代人が見てもグッとくるものだった。

 

個人的に今作では三船敏郎よりも、志村喬が演じる島田勘兵衛に強い魅力を感じた。坊主頭を撫でる仕草や表情からは温厚な印象を受けるが、歩き方や眼光にはただならぬ威圧感がある。一国一城の主を夢見ていただけあって「人を統率する」能力は相当のものなのだろう。最終的には勝四郎が久蔵に靡いていたのは、勘兵衛の敏腕すぎる指揮官っぷりに引いてしまい、同じ凄腕でも人間味のある久蔵に惹かれたからかもしれない。

三船敏郎演じる菊千代のキャラの濃さにはちょっと馴染みにくさを感じて、昔の映画だからクセが強いのかと思ってしまったが、彼が農民の生まれだと知ってからは納得できた。このように侍から見た農民達の胡散臭さは至る所から観る者に伝わってくる。

エンディングで、侍だけでなく自分たちの仲間や長老までもが死んだにも関わらず、陽気に歌いながら田植えをする農民達は「仲間の死を乗り越えた」というよりは、あまり深く気に留めていないように見える。まるで野生の生き物のように、深い感情を持たずいつも通りの生活に戻っている様子がなんとも不気味だった。勘兵衛が「侍達の負け戦」「農民の勝ち」と考えたのは、農民と侍は同じ人間でありながら異なる存在であると悟ったからかもしれない。

 

 

映画好きとしては黒澤明監督の作品はいつか見ていきたいとは思っていたんだけど、モノクロ映画であることや重苦しそうなイメージを勝手に抱いていたことから中々手が出ずにいた。『Ghost of Tsushima』の発売はそんな僕に黒澤映画を見る良いきっかけを与えてくれた。サカパンに感謝。

Ghost of Tsushima 序盤の感想

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Sucker Punchのゲームを遊ぶのはインファマス2以来。インファマス2は結構楽しかったんだけど記憶に残るほど飛び抜けてはいなかった印象で、今作も正直言うとセールまでスルーしようとしていた。

力の入った宣伝を見せられ続けて「乗せられるものか」と変な意地を張っていたけど、やっぱり発売直前になると急激に欲しくなりますね…。どうせならと『七人の侍』や『用心棒』まで見て準備万端で発売を待っていた。我ながら見事に乗せられてる…。

 

BAD

  • 序盤のストーリーはちょっと大味な印象。急展開や回想シーンの連続であまり引き込まれなかった。
  • チュートリアルキャラが気の強いレジスタンス感溢れる女で凄く洋ゲーっぽい…。
  • 表情や非戦闘時のNPCのモーションには少しぎこちないところがあって、他の新作ゲームに比べると見劣りする。吹替と口の動きも揃えられていない。
  • 怒っているときなどの表情がちょっとだけ大袈裟で欧米人っぽくて気になる。よく言われることだし、意識してかなり抑えられているとは思うんだけど。余力があれば吹替の口の動きと併せてアップデートしてほしいなぁ…。

 

GOOD

  • 戦闘のバランスが良く、楽しい。難易度「普通」でも気をつけないと割と死ぬ。ゴリ押しが効きそうで効かない絶妙な難しさで、オープンワールドとして長く遊び続けても楽しめるちょうど良さ。
  • 拘り抜かれた戦闘モーションは凄くかっこいい。ガシャガシャと斬り伏せて血飛沫ドバドバな感じが楽しい。

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  • 表現規制はないので、首のない死体が転がっていたり槍に串刺しの生首があったりする。それでも戦闘中の欠損表現が殆どないのは、手抜きではなく「時代劇」感を損なわないためだろう。実は特定の技で敵の手首だけは切り飛ばすことができるんだけど、これは『用心棒』のオマージュに違いない。
  • 戦闘スキルは一本道のアクションゲームと比べても遜色無いほどバリエーション豊かで、最後まで飽きずに楽しめそう。

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  • 堂々と斬り込むか暗殺するかは勿論プレイヤーの自由だ。初めに敵を減らすことができる「一騎討ち」システムによって、堂々と斬り込む場合のデメリットが抑えられているのが面白い。多数の敵に真っ正面から挑んでおきながら戦いを優位に始められるのは、黒澤映画の三十郎のようで素敵。普通のゲームならロールプレイの放棄になるステルス無視のゴリ押しに「意味」を持たせているのは凄く画期的だ。

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  • タッチパッドで納刀や礼などができる。血を払ったり拭き取ったりしてから納刀するモーションが最高にイカしてる。これができることに気づいてから急激に楽しくなった。雰囲気、大事。

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  • 容量の少なさからボリューム不足を心配していたがワールドは中々広く、探索できる場所も多い。

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↑これだけかと思いきや…

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↑まだまだ北がある!

  • ワールド内はどこに行っても息を飲むほどの美しさ。四季を全て取り入れるという思い切った作りのお陰で様々な景観を楽しめる。これらの景観を活かした詠歌のミニゲームまで用意されている。しかも結構おもしろい。

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  • サブクエストが豊富。あっさりしたものもあれば、かなり凝ったものもある。琵琶法師が語る際の水墨画演出なんて海外スタジオが制作したとは信じられないほど。

 

 

総評

始めてすぐの頃は上に挙げたような細かい不満点から、肩透かしを食らった気がして「やっぱりSucker Punchだからあと一歩及ばないゲームだなぁ…」と思ってしまった。

でも、豊富なイベントを通して楽しい戦闘と素晴らしい景色に浸っているとじわじわと魅力が強まってくる。「ここ良いなぁ」と思える要素がどんどん増えていく。サカパン、早合点してごめん…。

遊べば遊ぶほど楽しくなっていくのはオープンワールドゲームとして理想的じゃないだろうか。ゲーム性の良さにはかなりグッときているので、これからのストーリーの盛り上がりにも期待している。

 

ちなみに洋ゲーあるあるだが、明るさ設定を下げるとドギツイ色味になるので、目安を無視して初期の明るさにしておいた方がグラフィックが綺麗に見えるかもしれない。もちろんモニターにもよるけど、ちょっと色が濃いなぁと感じる方はお試しあれ。

フォレスト・ガンプ(1994)

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トム・ハンクス主演。BTTFシリーズでお馴染みロバート・ゼメキス監督作品。

もはや説明不要の名作。この作品、いつか見たいなぁと思い始めたのが10年以上前だと思う…。流石に放置しすぎ。

 

元々の涙脆さに最近ますます拍車がかかっているけど、この作品にかかると開始15分足らずで泣かされる。そっち系で攻めてくるのかーという、予想外のボディブローだった。

まぁ一度こうなってしまうと相手にマウントを取られたようなもんで、その後何回も泣かされた。

 

ジェニーの生いたちや戦争の悲惨さ、政治的な描写をフォレストの存在が緩和してくれていたのは凄く巧いつくりだった。重いテーマを含みながらも、全く嫌な気持ちにならず爽やかな感動で包んでくれる。

 

いやぁ、良い映画だった。

感動系映画って結局泣かされて疲れるのであんまり好きじゃないんですが、それでもたまにふと見たくなる麻薬性がありますね。ただ、泣いちゃうと眼圧のせいだろうか、後々頭痛がセットで付いてくるのでやっぱり苦手。