アイ・アム・レジェンド 別エンディング
アイ・アム・レジェンドは大昔にテレビ放送で見たことがあり、ウィル・スミスが英雄的な活躍をして終わるありきたりなエンディングになんとなくがっかりした覚えがある。
それ以来見直すこともなかった映画だが、バイオハザードでゾンビ熱が高まっているところに『別エンディング』と銘打たれた今作を見つけ興味が湧いてきた。(ゾンビ映画という括りには入らないかもしれないけど)
別エンディングでは伏線がしっかり回収されていてストーリー的にも良かったし、何より今作のポストアポカリプス作品としての素晴らしい出来を再確認できたのが嬉しい。廃墟と化したNYの様子は素晴らしいし、ゾンビ作品の『シェルター暮らし』が大好きな僕にとって、生活の様子をしっかり描いている本作はかなり好み。
また本作には精神的にゾクリとさせられるシーンがあってこれが今までにないタイプの恐怖。
少々強引な展開もあるがポストアポカリプス好きなら今からでも見ておいて損はない、良い作品だった。
以下ネタバレあり。
知能の無いただのゾンビだと思っていた感染者が、マネキンで主人公を罠に嵌めるシーンは今作イチの見どころ。精神的にゾクッとする他では味わえない恐怖感。太陽が傾いていく美しい街の様子とは裏腹にダーク・シーカーとダークわんこが迫ってくる緊迫感も素晴らしい。
人類のために治療法を研究していた主人公は、ダーク・シーカー側から見れば仲間を次々と攫っては実験台にして殺していくマッドサイエンティストだった、というドンデン返しは見事。こうなると壁にずらっと貼られた被験者の写真の見え方も変わってきて面白い。
「他民族に自分たちの価値観を押し付ける危険性」というテーマは普遍的で、古くはキリスト教をはじめとする宗教、現代なら先進国から途上国への資本主義やその他諸々の押し付けと対応するだろうか。まぁ、そもそも人間が変異したダーク・シーカーを異種族として尊重すべきなのかは微妙なところかもしれないが…。
ともあれ、廃墟と自然の美しさやポストアポカリプス世界での孤独な暮らしを丁寧に描きつつ、単なるホラー映画で終わらない深いテーマ性まで盛り込んだ野心的な映画だった。